25 October 2005

【ヒューマン】体感してほしい『きょうの私』…水夏希 (存檔)

【ヒューマン】体感してほしい『きょうの私』…水夏希


「雪組は家族的ですね」と笑顔を見せる水夏希 宝塚歌劇団雪組の水夏希はクールな雰囲気とキレのある踊りで人気の男役スター。4月に宙組から雪組へ組替え。24日に宝塚大劇場(兵庫・宝塚市)で開幕した公演で雪組デビューした。過去には月、花組にも所属。柔軟な吸収力とひたむきな姿勢で走り続け、組替え経験が輝きに磨きをかけた。入団13年目。客席との距離感を大切に「『きょうの私』を体感していただきたい」と心機一転、新天地でもまい進していく。〔写真右:抜群のスタイルも魅力。「雪組は家族的ですね」と笑顔を見せる水夏希。新たな環境での活躍に期待だ=兵庫・宝塚市。同下:「霧のミラノ」での1シーン。二枚目ぶりがキラリと光る水夏希〔左〕=(C)宝塚歌劇団


 



 1メートル69の長身に涼しげな目元。クールで二枚目な役にピタリとハマり、ファンを「(男役の)色気がある」とうならせる。が、目の前の彼女は明るい笑顔で言葉がポンポンと溢れ出し、終始会話が弾んだ。


 「黙っていると落ち着いてクールに見えるのかもしれませんが、しゃべり出したらもう大変。全然クールじゃないです(笑)。出番前に忘れ物を取りに走り回っていたり、しっかりしていそうで全然しっかりしていないし」と白い歯がこぼれた。このギャップもファンにはたまらない魅力なのだろう。素顔はチャーミングな女性だ。


 宝塚には花月雪星宙の5つの組と専科がある。水は初舞台後に月に配属。その後、花、宙を経て今回3度目の組替えで雪組生になった。昨年も劇団創立90周年の企画で雪、花組に特別出演。“組回り経験”は豊富だ。


 「基本的に宝塚は1つだと思います。ただ細かい規則や習慣などで、それぞれ組のカラーの違いはありますね。ずっと同じ組だと上下級生の皆を知っていて、互いのペースが読めるから(芝居など)あうんの呼吸でできる部分がありますが、組替えをすると自分のあり方や、この組でどう役づくりをしていこうかとか、改めて自分を見つめ直せます」


「霧のミラノ」での1シーン。二枚目ぶりがキラリと光る水夏希(C)宝塚歌劇団 昨年の特別出演は“お客さま”だったが、今度は正式メンバーとなって臨む雪組公演「霧のミラノ」「ワンダーランド」が開幕。


 「いつもの雪組じゃない印象を持っていただけるように頑張りたい。1人加わっただけで随分変わったねって言われたいですね」と瞳を輝かせた。


 “男役人生”は高校時代から始まった。新入生歓迎会でミュージカル部に入部、男役を演じていた。宝塚とは同じ部の友人に誘われ観劇したのが最初の出会い。3回目に見た「ベルサイユのばら」で心を奪われた。平成5年に初舞台を踏み、以後着実にステップアップ。ただ、転機も沢山あったという。月組時代に新人公演で初主役を演じた際、化粧の仕方や立ち居振る舞いなど「宝塚の基本を教わりました」。組替えも自身を成長させた。花組では当時のトップスター、真矢みきに影響を受け、客席と一体化した舞台の楽しみ方を学んだ。また、宙組在籍中に挑戦した古典コメディーでは「『間』が大事であることなど、いろいろ学びました」。


 吸収したことが表現に奥行きを与えている。では、目指す男役像は?


 「私も聞きたいぐらい(笑)。いろいろな組を転々として(さまざまなタイプの男役を目の当たりにし)範囲も広がって何でもありよ!みたいな感覚になってきていて。逆に1つに絞ると幅も狭まるし、自分らしさを見つめつつ、常に新しいものを取り入れて挑戦していきたいなって思います」と“マルチ”志向の様子だ。


 公演中で印象深いのは、弾ける笑顔で何度も2階席を見渡す姿。視力が2・0と抜群にいいのだ。


 「2階席の5、6列目ぐらいまでは見えるんです。1階1列の席も2階の端の席も皆さんお客さま。そう思うと遠い席ほど『ちゃんと見ていますよ』って思っちゃう。(劇場の)端から端までエネルギーをお届けしたい気持ちはすごくありますね」


水夏希 入団13年目。立場もますます重要になってきた。


 「1日しか来られないお客さまもいらっしゃるはずですから、そういう方々のためにも精いっぱい舞台を務めたい。失敗があっても、自分の中で精いっぱいのことはできたっていう毎日にしたいです。今という時間を大切に『きょうの私』を体感していただきたいですね」


 舞台人としての自覚が頼もしく、さらなる飛翔の時がきた。


★燕尾服姿を披露


 「霧のミラノ」は19世紀のイタリアを舞台にミラノ貴族のロレンツォ(朝海ひかる)の恋と苦悩と友情を描くミュージカル。水はロレンツォの友人で商人のジャンバティスタ役。「元貴族で革命家なんですが、商人として各地を飛び回っていた自由な感じや豪快さ、また危険と背中合わせで生きてきた強さとか、そういうものが出せたら」。一方のショー「ワンダーランド」では燕尾服姿も披露。「バラエティーに富んだ内容で、衣装もガラっと変わりますし、楽しい作品です」。宝塚大劇場で8月1日まで。東京・有楽町の東京宝塚劇場では8月19日~10月2日まで公演。


★双子姉妹


 水には二卵性双生児だが、顔がそっくりな妹がいる。増田葉子さん。増田さんは針きゅう師の資格を得て、現在はスーパーサーカス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」のジャパンツアー「アレグリア2」に参加、裏方として支えている。増田さんは水の公演をだいたい観劇するそうで「体のケアなどアドバイスをしてくれるので、すごく助かっています」。


★水流健康管理


 実は公演中に欠かせないモノがある。漢方薬とサプリメント。「公演中、1回はダウンしてしまうんです。声がよく出なくなってしまったり。そういう状況を避けたいと思い飲んでいます」。



















▼水夏希(みず・なつき)
 8月16日、千葉市生まれ。千葉県内屈指の進学校、県立千葉女子高出身。平成5年「BROADWAY BOYS」で初舞台。翌年月組に配属。7年「ME AND MY GIRL」新人公演で初主役(1部)を務め、8年「CAN-CAN」新人公演単独初主演。9年花組へ異動。12年「源氏物語 あさきゆめみし」で初の女役(明石の上)に挑戦。同年ベルリン公演にも参加、7月に宙組へ組替え。今年4月雪組へ異動。芸名はいろいろな形にかわる「水」と、「夏」生まれであることから知人が命名。愛称ミズ。血液型A。


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